おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

樟脳(しょうのう)の匂いを私は知らない

 樟脳って、昭和世代には懐かしい響きですよね。でも、本物の樟脳って、実はなじみが無いんじゃ無いかな、そんな風に思いました。突然ですが。

 衣類の防虫剤としてハッキリと記憶にある「樟脳」という言葉。でも、それは案外私達の親世代(戦前生まれ)が使っていた言葉を何となく受け継いだだけで、実は私達が実際に使っていた防虫剤は「ナフタリン(ナフタレン)」だったようなのです。

 昔の悪い冗談で、彼氏のいない女性のことをナフタリン(=虫がつかない)と呼んだりした、あの強烈な匂いの防虫剤は化学的に合成された薬品で有り、祖父母世代・親世代が恐らく知っていたであろう本物の樟脳は、樟(くすのき)から抽出した天然由来のものだったのです。

 

 現在の日本では本物の「樟脳」はほとんど生産されておらず、防虫剤としてはかなり高価な商品となっています。でも、体質的に化学物質に過敏であったり、自然のものを愛好したいと考えているような人の間では根強い人気があるようです。そして、そういった方々の声をネットでみますと、「匂いが好きです」「匂いに癒やされています」というものが多数見受けられるのです。

 良くお通夜の席で、高齢男性の喪服から懐かしくも強烈な防虫剤の匂いを嗅ぐことがあり、「樟脳の匂い強烈だなあ。無臭の防虫剤もあるのになあ」と思っていましたが、あれはナフタリン特有の匂いだったのですね。樟脳ではなく。

 今までは「嫌なにおい」に分類していた樟脳ですが、自分の勘違いが分かった今は、本物の樟脳(日本産がイチオシらしいです)の匂いを嗅いでみたいものだと思っています。(変わり身の速いのが私の取り柄です。虫が好かないなんて思わないで下さいね)

 

 さて、最後になりますが、私がなぜいきなり「樟脳」の話など始めたのか、説明したいと思います。

 私は一昨日公開した拙ブログで、「カンフル剤を打たれた気分です」という表現を使いました。その際、使い方が適切であるかどうか念のために調べたところ、次の事実を知ったのです。

 

樟脳(しょうのう)は、分子式 C10H16Oで表される二環性モノテルペンケトンの一種である。カンフルあるいはカンファーkamferKampfercamphorcamphre)と呼ばれることもある。 Wikipediaより 

 そう、カンフル剤のカンフルとは樟脳のことだったのです。

 現在ではカンフル剤を強心剤として使用することはなくなったものの、「物事を復活させる即効性のある手段」を、比喩的に「カンフル剤を打つ」と表現することは残っているようです。

 でも、それも時間の問題でしょうね。私達が本物の樟脳を知らない世代になったように、今の若い人はカンフル剤を知らない世代だと思います。こうして、「物」が消えていけば当然それを表す「言葉」も消えていくわけで、残念とは思っても、それは止めようのない時の流れというものなのでしょう。

 樟脳もナフタリンも、固体から気体へと(液体にならずに)変化して消えていきます。これを「昇華」と言いますが、言葉が消えていくときも、いつの間にか姿を消しているという点で、似ているような気がします。寂しい気もしますが、それが万物の定めなのでしょう。そう考えて自分の中で消化することにしたいと思います。では。