おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

皆さん「させて頂き」過ぎ

 謙譲語の「させて頂きます」という表現が、あまりにも世の中に蔓延していて気になりませんか?私などは最早「気になる」を越えて「気に障る」レベルなのです。

 ちょっと前に酒井順子著『ズルい言葉』を読んでいましたら、この「させて頂きます」が取り上げられていました。図書館から借りた本で、既に返却してしまったので記憶を頼りに書くのですが、酒井順子氏は「Noの言えない相手に[させて頂きます]と言うのは、一見自分を低いところに置くと見せかけて、相手にさらに低い姿勢をとらせることになる」といった論理を展開されておられた気がします。

 この章を読んだとき、どのぐらい前からこの表現は出現していたのだろうと気になり本の出版年を見たところ、2010年でした。そうなんだー、10年も前から既に頻繁に使われていたんですね。

 

 この「させて頂きます」を耳にする度、そんな畏まらんでも、好きにやりゃーいいじゃんと、がらっぱちな気分になるのですが、でも、私が本当に気にくわないと感じるのは、この言葉のウラに見え隠れする「臆病さ」なのだと思います。

 そんなに、他人からの批判が恐い?あーだこーだ言われるのを避けたいの?少しでも攻撃を防ぐための予防線を張るために、とりあえず「させて頂きます」って、身を低くするんでしょう?「謙譲語」という防護服をまとうのでしょう?

 

 先日、ラジオを聴いていたところ、リスナーからのメールが紹介されました。

 「・・・○年前の今日、今の夫からプロポーズして頂き・・・」

 ああ、この方の「夫」は、さぞ、やんごとなきご身分の方であらせられるのだろう、そう思いました。なぜなら、「夫からプロポーズされ」と言っても世の中の誰一人批判はしないと思うのす。そこを「させて頂きます」の受け身形を使うからには、私の先ほどの「批判されたくない理論」を越えた事情・理由があるのだろうと拝察するからです。

 と、意地の悪い冗談を書いてしまうほど、「させて頂きます」の乱用は気になっているのです。第一、「させて頂きます」は9音、「します」なら3音で済むんですよ。シンプルな方が表現としても美しくないですか?

 もう一つ。Youtubeで、ある女性が自作の手芸作品の作り方を紹介する動画を見ていた時のことも書きたいと思います。

 動画は材料の説明から始まるのですが、彼女は一つ一つ、百均のお店の名をあげ「これは、○○さんで購入させて頂きました」と紹介します。「購入させて頂きました」「購入させて頂きました」って、何回も良くかまずに言えるなーと半笑いの気持ちで見ていました。

 動画もいよいよ最後のまとめにはいり、彼女は出来上がった作品を見せながら、言いました。

 「自分でもとても気に入った作品です。大切に使わせて頂きたいと思います」

 なんか、凄くないですか。自分がへりくだって相手を立てるのが「謙譲語」の役目なのに、逆に、作った人=自分を立ててるんですよ。

 

 日本語の乱れといったことが問題にされることがありますが、私はあまりそういうことは気にならない質です。というのは、言葉というものは常に変化していくものだと考えていて、「乱れ」もいずれはスタンダードになったり、あるいは自然消滅したりするのだろうと捉えているからです。その視点に立てば、私が今嫌っている「させて頂きます」の乱用も、めくじら立てず許容すべきということになるのかもしれません。

 でも、ここは譲らないことにします。私は「させて頂きます」の乱用にはストップをかけたいと思います。なぜなら、先にも書きましたが、その表現の奥にある「ペコペコ頭下げてるんだからさ、気に入らない事があっても見逃してくれよ」という姿勢が嫌いだからです。

 以上、私の展開した持論には間違いがあるかもしれません。でも、「させて頂きます」なんてまどろっこしい言い方を、何回もかまずに言えることよりも、少なくともその意味を自分なりに咀嚼することの方が大事だと思うからです。そして、そこには当然、批判や辛い批評といった耳に痛い言葉が発生したりもするでしょう。でも、他人から批判され、そしてそれに耳を傾け、そうやって少しずつでも人は成長していけるのではないかと思います。噛めば噛むほど味の出るスルメをめざし、自分の干からびた脳みそを使っていきたいと思います。では。