おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

上等舶来珍無類 後編

 先週の水曜日(9月3日)に放送された、NHKBS3『刑事コロンボー愛情の計算』ですが、ちょっとビックリしたことがあるのです。

 コンピュータで動くロボットが登場するのですが、その開発は一人の天才少年(10歳ぐらい?)に任されていました。勿論、その少年は犯人ではありません。ただ、コロンボにヒントを与えるという大変重要な役回りでした。そして、コロンボがその天才少年に会う前には、少々不自然なほどハッキリと彼の名前が告げられるのです。視聴者が絶対に聞き逃さないレベルで。

 「今、研究室に居ますよ。名前は、ティーブン=スペルバーグです」

 

 「えっ!?」って思うでしょう?絶対に偶然ではないはず、そう思いますよね。すぐにWikipediaでスティーブン=スルバーグについて調べました。以下、その結果です。

 

 17歳 カリフォルニアに遊びに行き、ユニバーサル・スタジオに3日間入り浸り、人脈をつくる。スタジオに顔パスとなる。

 18歳 カリフォルニア州立大学で映画を専攻。休みにはユニバーサルへ。

 21歳 映画制作資金の提供者を得る。最初の作品『アンブリン』完成。ユニバーサルテレビ部門の責任者の目にとまり、7年契約を結ぶ。

 25歳 『刑事コロンボ』の第三作『構想の死角』で監督を務める。また、テレビ映画として撮った『激突!』が評判となる。海外では劇場公開され、世界に名を知られる。

 28歳 『続・激突!カージャック』で劇場用映画監督に進出。

 29歳 『ジョーズ』公開。

 

 この後も映画監督としての華々しくも豪華な業績が延々と続くのですが省略します。

 冒頭で紹介した『刑事コロンボ』の天才少年の回は、スピルバーグが27歳の時に制作されています。恐らく、当時既にスピルバーグの天才ぶりは周知のことだったのでしょう。そして誰かが、

 「このコンピュータとロボットを操る天才少年の名前は、スティーブン=スペルバーグにしよう」とふざけ半分に言い出し、

 「賛成、賛成」「ピッタリだ」の声で決まったのではないでしょうか。

 若い圧倒的才能の出現を喜び祝福し、同時に少しの畏怖さえ覚える、それはまるで、今の日本における将棋の藤井二冠を見るがごとき様相だったのではないかと想像します。

 

 映画監督スティーブン=スピルバーグは文字通り「上等舶来珍無類」の才能に間違いなく、しかも彼の回りには大勢の名伯楽もいたわけです。

 でも、同時に次のようにも思うのです。

 『史記』の平原君伝から出た言葉に「嚢中(のうちゅう)の錐(きり)」というのが有ります。錐を袋に入れると先が袋を突き破って外に出てしまうように、才能のある人物は隠れていても必ず世に現れることのたとえです。

 スピルバーグが、ハリウッドという才能の宝庫の中からたちまち頭角を現わしたのは、彼自身の錐のように鋭い、他を圧する才能そのもののなせる技だったのかもしれないと。

 希少種アハルテケが自身の毛並みで黄金に輝くように、スピルバーグの才能も、誰の目にも明らかに光り輝いていたのでしょう。Wikipediaを読みながら、そんな風に思ったのでした。

 

 前・後編と長くなりましたが、自分ではなかなかジョウズにまとまりがついたと思っているのです。スピルバーグだけに。では。