上等舶来珍無類(じょうとうはくらいちんむるい)という言い回しを、耳にあるいは目にしたことはありますでしょうか。私はこの記事を書くために調べ物をして知りました。意味は皆さんの想像通り「(舶来品だから、あるいは舶来品のように)上等で、非常に珍しく他に例がない」というような感じです。
8月30日の東奥日報朝刊21面に、
”黄金の馬” 希少種アハルテケ 赤ちゃん元気すくすく
という見出しの、写真付きの記事がありました。
八戸市にある牧場で、中央アジア原産で世界に約3千頭しかいないとされる希少種の”アハルテケ”に、子馬が誕生したというニュースです。
アハルテケは現存する世界最古の馬で、光沢のある毛並みから「黄金の馬」と呼ばれるのだそうです。(ここまで東奥日報より)
一説にはアハルテケは、一日に1千里(約500㎞)を走り「血のような汗を流す」という、中国の歴史上の名馬、汗血馬(かんけつば)の子孫ではないかと言われているそうです。まさに「上等舶来珍無類」の馬ですね。
(こちらのWikipediaの記事は汗血馬について簡潔に上手くまとめてあり、面白いですよ)
「一日に千里の馬」と言えば、高校時代に習った韓愈『雑説』の一節、
世に伯楽ありて、しかる後に千里の馬有り がすぐに思い浮かびます。
伯楽とは馬の良し悪しを見分ける名人の名前ですが、転じて馬医のことも言うようになったそうです。
さて、今日のタイトルについて説明したいと思います。「記事を書くために調べた」と書きましたが、私が「アハルテケ」→「千里の馬」と連想し、次に思い浮かべたのは、亡き母がその昔、しばしば口にした、「上等伯楽馬の医者」という、呪文のような褒め言葉でした。
母は何かを褒めるとき良く「上等、上等。上等伯楽馬の医者」と使っていました。私が「どういう意味?」と聞いても、本人も良く分かってはいないらしく、笑って誤魔化していました。
伯楽=馬の医者は分かるのですが、なぜ「上等」の後に「伯楽」なのかなあと、ボンヤリ疑問に思っていました。が、とうとう、およそ半世紀を経て「ネット検索」という21世紀の魔法の杖を振るいました。そして、「これだ!」に辿り着いたのです。それは「上等舶来」という言葉でした。おそらく、「舶来」の部分が聞き違いか勘違いにより「伯楽」となったのではないかと、あくまで私の推測です。
そして、上等舶来珍無類は、「上等舶来」だけでも意味をなしますが、語呂を良くするために「珍無類」がくっついたらしいのですが、同じように、「馬の医者」もシャレとノリでくっつけたのだろうと思います。
ただ、「ネット検索」をもってしても、「上等伯楽馬の医者」そのものにヒットすることは出来ませんでした。きっとこの言葉は母が暮らした狭い狭いコミュニティの中だけで流通していたのでしょう。
もしかしたら、その狭い世界には「千里の馬」も居たかも知れない。しかし「伯楽」が居なかったために・・・。そんな事もふと思いました・・・。続く