弘前市立博物館について、紹介したいことがあります。下は二年前の、同博物館にて開催された『歌川国芳展』についての記事です。その記事の中に博物館正面の写真がありますが、再掲したいと思います。
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※注 二年前の写真です。今現在は7月12日までの会期で、『津軽アーティスト列伝』という展覧会開催中!
弘前市ゆかりの建築家・前川國男氏による設計の、このシックな建物は弘前公園の中にあり、春夏秋冬、折々に公園の美しさにマッチしたたたずまいを見せてくれます。
先日、『津軽アーティスト列伝』を見に行ったのですが、一番感銘を受けたのは、展示物よりもそれを容れる建物、つまり博物館そのものでした。前川國男氏の、細部へのこだわりと言いますか美意識と言いますか。そういうものに驚きと畏敬の念を覚えました。
「斫(はつ)る」という動詞、あるいは「斫り」という名詞は聞いた事が有りますでしょうか。「削る」「削り」とも書くようですが、私は初耳でした。コンクリート業界では至って普通に使われている言葉の様ですが。
左は斫り仕上げの博物館ロビー。右は壁のアップです。
博物館には何回も行っているのに、こんなこだわりの壁だったなんて、全然気付きませんでした。ひとたび気付くと、凄く「いい顔」をした壁なんです。建築家のこだわりって凄いです。建物は、機能を持った存在であるばかりではなく、本当に「作品」という感じがします。
なるほど、建築家の「家」は、家を建築する人ではなく、その道に優れた人を表す「家」なんですね(笑)
更に別なこだわりもありましたよ。
左はロビー。右はロビ-から見える外部です。コンクリートの木と本物の木が並んでいます。
木で桶のような枠を造り、コンクリートを流し込む。それでこんなにもハッキリと木の質感を写し取れるんですね。枠を外してこの柱が現れたときは、皆さん「オッケー」と思ったでしょうね。
アイディアを出す建築家やデザイナーが凄いのは勿論ですが、アイディアを現実にする職人もまた、たいしたものです。
美術館や博物館を訪れると、ついつい展示物にばかり目が行きがちです。が、いずれの建物も趣向を凝らし、技術の粋を集めて造られているのは間違いありません。時間と心に余裕を持って建物自体もゆっくり鑑賞したいものだと改めて思いました。では。