息子達が6歳と3歳ぐらいだった頃の出来事で、私の鉄板ネタがあります。これもやはり、津軽弁だからこその味わいがあるのだと思います。
この話を紹介する前に、予備知識として、「ける」という津軽弁について解説します。
「ける」とは、「あげる」「やる」という意味の動詞で、派生形として「けでやる」というものがあります。「ける」が単に「誰かにあげる」「手放す」という意味なのに対して、「けでやる」は距離感が加わります(私論です)。自分の手から離れて、無関係になるぐらい遠くに行ったという感覚が加わると思います。
また、標準語の助詞の「に」は、津軽弁では「さ」となります。
例1 あなた に あげる → おめ さ ける
例2 子犬 を よそ に あげた → 犬のまれ子 ば よそ さ けでやった
では、本題に入ります。
息子その1が6歳、息子その2が3歳ぐらいだったと思います。
ある日、二人が口げんかを始めました。うちは男の子二人でも、「手をだす」ということがなかったので、ケンカは決まって「口げんか」でした。いつもはある程度のところで収まるのですが、その時は長い、長い。おまけに声も大きくなって、うるさい、うるさい。我慢が出来なくなって、私は怒鳴りました。
私 「うるさい!なんでそうやってケンカしてうるさぐするの?お母さんはもう我慢できない。二人とも、よそ さ けでやるよ!」
息子その2 「いやだ、いやだ。よそ さ けでやれば いやだ」
私の脅し文句を本気にした息子その2は、泣きながらいやだ、いやだと繰り返します。
私 「じゃあ、どうすればいいか考えなさい」
しばらくすると、泣きじゃくりながらも、息子その2が言いました。
息子その2 「どうすればいいか、考えた」
私は彼の必死な様子にちょっと感動しながら、きっと、「もうケンカしない」とか「お兄ちゃんと仲良くする」とか答えるんだろうな、と予想しながら聞きました。
私 「じゃあ、どうすればいいの?」
息子その2 「お兄ちゃんだけ、けでやればいい」
津軽弁の味わいが伝われば幸いです。では。
※手前味噌ですが、息子二人がケンカしても、「なぐる・ける」しないのは、親が手をあげなかったからではないかと思っています。