おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

ショートショート7 『サタンの爪』

 久しぶりにショートショートを作りました。お付き合い下さい。

 

 サタンの爪  takakotakakosun 作

 

   深夜、Tはパソコンに向かっていた。Tはブロガーだ。明日アップする記事を書いているのだった。Tのブログは自身が若かった頃、即ち、昭和の懐かしネタを取り上げることが多かった。

 記事は着々と仕上がっていった。内容は、かつて聞いたジョークの紹介だった。そのジョークとは、暴走族が族名を壁にペンキで書いたが、「サタンの爪」と書くべきところを、漢字を間違えてしまい「サタンの瓜(うり)」と書いてしまったという、他愛無いが昭和では大変有名で大受けした話だった。

 Tは、ブログの最後はダジャレで締めることにしており、いよいよ最後のダジャレを書こうとしている時だった。部屋の壁に黒い影が現れたかと思うと、天井から不気味な声が降ってきた。

 「私はサタン。お前が今書いたサタンの爪の話。その話を許すわけにいかぬ。サタンの名が笑いと共に語られるなど、あってはならぬことなのだ。屈辱だ。

 近頃ではすっかり忘れられ安心しておったのに、蒸し返させるわけにはいかん。どうだ、取引をしよう。お前はそのネタを諦める。その代わりに永遠の命、これでどうだ」

 Tは即座に断った。永遠の命など何になろう。悲しい末路は見えている。「では」とサタンは言った。

 「金ならどうだ。宝くじ、宝くじを三枚やろう」

 宝くじ三枚とは気が利いている。一等に前後賞か。Tは承諾した。

 「よし、契約成立だ。この契約を破ったなら、お前の魂は私のものだ」

 サタンが言い終わるなり、Tの手の中には三枚の宝くじがあった。自分に舞い込んだ幸運が信じられずにいるTの耳に、サタンの言葉が続いた。

 「ふふふ、宝くじ三枚、ただし、当たりくじとは言っていないがな、はーはっは」

 笑い声の余韻が残った。

 「この悪魔!」

 Tは悟り叫んだ。そして、黒い影が消えた部屋でがっくりと肩を落とし、呟いた。

 「さすがはサタン。詰めはウリのように甘くはなかったか・・・」

                            終わり