おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

夕焼けに惚れ惚れとすることの幸福

今週のお題「空の写真」

 

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 弘前市の西には津軽富士こと、岩木山がそびえています。なので、太陽は岩木山に沈み、それはそれは見事な夕焼けを披露してくれるのですが、その眺めは一日とて同じということはありません。

 私が30代後半の頃です。50代の同僚(男性)が、軽い調子で次の様な事を話されました。

 「昨日の夕焼け見た?私、ちょうど車に乗っていたときで、あんまり凄くて、車を道路脇に寄せて女房に電話したんだよね。夕焼け、見てご覧って」

 その方が場を離れた後、一緒にその話を聞いていた同年代の同僚(女性)と、

 「凄いね。夕焼け見てご覧って、奥さんに電話したんだって・・・。ラブラブだよね」

 そんな会話をしたことを覚えています。そのご夫婦の仲睦まじさもさることながら、50数年その地で暮らしている者に、そこまでの感動を与える「岩木山の夕焼け」の素晴らしさ!空はどんな空もそれぞれの魅力がありますが、ドラマチックという点においては、やはり「夕焼け」に軍配があがるのではないでしょうか。

 

 子どもの頃読んだ本で、一番好きなのは?と聞かれれば、「アルプスの少女」ですね。その中に、今でも忘れられないハイジとお爺さんの会話があります。

 ハイジ 「それじゃ、牧場や山が、燃えているみたいなのは、どうして?」

 お爺さん「あれはな、おてんとさまが、みんなにさよならをしてるのさ。でも、またあしたきてあげるよというしるしに、とっておきの美しい色をみせてくれるんだ」

 美しい夕焼けを目にすると、いつもこの会話を思い出すのです。

 「アルプスの少女」はテレビでも大人気でしたので、皆さんもストーリーはお分かりかと思います。ハイジとお爺さんは美しいアルプスの山々に囲まれ、山羊を飼い、食べ物をつくり、必要最小限の物を手に入れ、締め切りもなければノルマもない、一日が一日で完結するような生活を送っています。そして、そのような一日の終わりを知らせるのが素晴らしいアルプスの夕焼けです。

 夕焼けが終わり夜が訪れ、やがて朝がやって来ます。そして、明日という、昨日と同じ日が始まるのですが、二人はその事に何の疑問ももっていないのです。ほら、アルプスの夕焼けが約束してくれましたもの、「またあした」って。

 

 「笑点」の音楽を聴くと悲しくなる・・・。それは日曜日の終わりを意味するから。これは多くの日本人(学生も社会人も)の共通認識のようになっています。私は今年の3月で仕事を辞め、今は毎日が日曜日です。バラ色の毎日というわけでもないのですが、「仕事を辞めて、良かったことは?」と聞かれれば、「夜、布団に入って、明日の心配をしなくていいこと」でしょうか。

 ハイジやお爺さんのように、一日一日を充足して暮らすという心境にはほど遠いのですが、明日を案ずることなく岩木山に沈む夕日をみていられる、有りがたいことだなあと思わずにはいられません。

 そして、流石に58年生きてきたので、幸福という物がいかに壊れやすい物であるかも知っています。夕焼けを平和な気持ちで眺められる一日がどれほど尊い物であるか、あらためて心に刻みたいと思うのです。

 ちなみに、上に引用したハイジとお爺さんの会話は本から抜き出して書きました。ソラで覚えていたわけではありません。

 「山田君、私に座布団一枚!」では。