西洋において、「柘榴」は実に様々な意味を持つ果物です。「豊穣」や「子孫繁栄」といったプラスの意味もありますが、キリスト教においては、聖母マリアの純潔を表すと同時に、イエスの受難の象徴ともなっているそうです。
ボッティチェリの作品を2枚、「トンド」と呼ばれる「円形」の絵を見て下さい。どちらもザクロが描かれています。
『マニフィカトの聖母』
『ザクロの聖母』
どちらの絵がお好きですか。私は断然、一枚目です。一枚目は聖母のお顔の甘ったるさが、まさにボッティチェリ。いいですねえ。そしてそれ以上に、幼子イエスの表情ですよ、なんと言っても。
拡大しちゃいました。
もうこの表情は、自分の運命を悟り、受け入れていますね。さらに、やがて我が子を失うであろう若い母親に対する、哀れみの様なものさえ感じさせます。二人の手が支える「柘榴」が幼子の行く末を暗示して、悲しいですね。
二枚目の絵は、なんだかうるさくないですか。周囲を取り囲んだ天使達が、ガヤガヤお喋りに興じているようで、落ち着かない感じがします。聖母子にはホトンド、関心が無いんじゃないかと疑ってしまいます。視線のせいでしょうか。
視線って、大事ですね。パックリと口を開けた柘榴のように、目は、見る者に様々な意味を語りかけてきます。まさに、「目は口ほどにものを言う」なのです。