友人Aが、タンスを買ったとのこと。ただのタンスではありません。日本製の総桐タンスで、お値段もスゴイ物らしいです。還暦の記念に思い切って、ということです。
友人Aいわく、「いずれ、娘が欲しいとなったら、譲るつもり」
ああ、分かる。私には息子しかいないので、何か欲しい物があって、でも値段がネックで(つまり高価すぎて)諦めるとき、「娘がいれば買うんだろうな」と考えることがしばしば。自分でも贅沢かな、と思うようなものを買うとき、「娘に譲れる」というのはなんて力強く背中を押してくれることでしょう。分かります、分かります。
「母から譲られるもの」に、ミトコンドリアDNAがあるって、ご存知ですか?
遺伝子の本体はDNAという物質です。DNAは細胞の中の核に存在しており、父親から1セット、母親から1セット、受け継いでいます。なので、私達は、ある部分は父親に似、ある部分は母親に似ているというふうに遺伝の結果が現れていますね。
さて、細胞の中には、ミトコンドリアというエネルギーを作り出す細胞小器官が存在します。(このミトコンドリアを増やすと、いわゆる痩せやすいカラダになるんですってよ)実は、このミトコンドリアもDNAを持っているんです。卵子と精子が受精する際、核DNAは1セットずつ「持ち寄られ」ます。ところが、ミトコンドリアDNAは、卵子と精子の大きさの違いどおり、卵子からの提供が圧倒的で、精子からはごく少量しか提供されず、しかも受精後に、精子からのミトコンドリアDNAは排除されてしまうのだそうです。よって、私達のカラダ(をつくる細胞)のミトコンドリアDNAは、100パーセント母親から受け継いだ物ということになるのだそうです。
私は私の母から、母は祖母から、祖母は曾祖母からと綿々と受け継がれてきたミトコンドリアDNAは、今、私の二人の息子に受け継がれています。しかし、息子からその子供達に受け継がれることはありません。さらに、私も私の母もそして祖母も一人娘なので、少なくとも祖母から私に続いたミトコンドリアDNAは息子達の代で途絶えてしまうことは確定なのです。なんとなく、心がシーンとします。悲しいとかではなくて、大げさに言うと宇宙の「深淵」を覗いたような、そんな感覚です。
と同時に、顔も名前も知らない曾祖母に、もし姉妹がいて、祖母に従姉妹がいて、母に女のハトコがいて、その人に娘がいて・・・、そうなれば私の知らないところに、私と同じミトコンドリアDNAを持った人が存在し、この先も受け継がれていくかもしれないわけで、ますます心は不思議の思いを深くしていきます。
息子二人のスネ。見事に私譲りのO脚です
娘がいなければ、タンスどころか、ミトコンドリアDNAのバトンも途絶えてしまうという、大げさで、そのくせどうということもないお話です。ちょっと知ったかぶりで書いてみました。
タンスの話なので、「引き出しの多さ」を自慢しようと思って。