おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

②「希少価値」について考えている(ミナ ペルホネン)

 そもそも私がなんで「希少価値」について考え始めたかと言いますと、9月に友人と訪れた青森県立美術館の、こちらの展示がきっかけでした。

 

 「ミナ ペルホネン」は、デザイナー皆川明氏によるファッションブランドです。洋服の「形」は至ってシンプルで、このブランドで特筆すべきは「生地」なのです。

 その生地は手織りとか手刺繍というのではなく、あくまで機械による生産ながら、圧倒的な技術力と発想の豊かさによって、こだわりの逸品となっているのでした。

 

 「一点ものを大量生産している!」

 「ミナ ペルホネン」の特徴を一言で表すと上のようになると思ったのですが、この表現を思いついたときは、我ながら上手いことを言う!と思ったのでした。

 では具体的に見ていきましょう。

 

 「ミナ ペルホネン」を代表する柄「タンバリン」。

 機械刺繍なのですが、円が少し歪んだ形をしていて一つ一つ異なっているのが分かりますでしょうか?さらに、その円を形作る小花のような刺繍も、やっぱり一つ一つ形が違うのです。

 機械にとって得意なことは、全く同じものを作ることですよね。その真逆のことをさせようとするのですから、職人さんの苦労は並々ならぬものがあったのだそうです。

 「タンバリン」からは洋服を超えて日用品から家具など、様々な製品が生まれているそうで、人気の高さがうかがわれます。シンプルで有りながら「一つ一つ異なっている」という、まるで手作りのような、陳腐な表現ですが暖かみの感じられるデザインが人気の秘密でしょうか。

 

 モデルは市川実日子さん。

 余談ですが、彼女の顔にハッとしました。青森県弘前市出身の美術家で奈良美智氏という方がいらっしゃいます。県立美術館には奈良氏による「あおもり犬」という作品が展示されています。

 市川実日子さんはその奈良氏の描く女の子にそっくりだと思ったのですが、どうでしょうか?

 

 もう一つ、「機械で作られる一点もの」の例を紹介したいと思います。

 何メートルもの生地が天井近くから吊されていて、はじめは、迷彩模様の所々に置かれた白い葉っぱの意味が分からず、あっさり通り過ぎようとしたのです。ところが、友人の「これ、凄くない?」という一言があり、じっくりと見たところ、凄い!

 

 はめ込みパズルのようになった雲形の部分を切り抜くと、その形通りに置かれた白い葉っぱが美しく姿を現すという仕掛けなのです!!!

 アップにしますね ↓

 一箇所だけ切り抜けばワンポイントに、たくさん切り抜けば全体に白い模様の入った生地になるわけで、一人一人が自分の手と感性で「私だけ」を入手できるのです。

 

 皆川氏は建築の分野にも手を広げられ、会場には氏のデザインによるコンパクトな一軒家が設置されていました。写真はその部屋の中に置かれたクローゼットです。ワンピースは円を切り抜くと蝶々が出てくるデザインですね。その下にあるのが迷彩模様から葉っぱが出てくる生地の巾着でしょうか。

 

 皆川氏は長く愛されるものを作りたいという思いから、生地に対して並々ならぬ思いを注ぎ込んでおられるようです。その思いに応えるように、「ミナ ペルホネン」ファンは、一着の洋服を大切に大切に、時には世代を越えて着続ける方が多いらしいです。「私だけの」、着る人にそう思わせる力があってこその作る人と着る人の関係だと思うのです。

 「ミナ ペルホネン」のこだわりの生地の数々を目にして、改めて、希少性に惹かれる人間というものの有りようについて考えさせられたのです。

 、私だけの一点ものが好きなのね、と。続く。