おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

ショートショート2 『針葉樹の黄葉』

 いや~、調子いいわ~。昨日に続いて、またまたショートショート出来ちゃった~。

 

 針葉樹の黄葉    takakotakakosun 作

 

 日本には八百万の神様がいらっしゃるそうですが、実は樹木にも、樹木の神様がいらっしゃるのです。

 

 初めの初め、樹木は皆同じ姿で名前は無く、全て「木」と呼ばれていました。「木」はその事がなんだかもの足りなくて、神様に名前をつけて下さるようお願いしました。

 「ああそうだね。名前があった方が便利だよね」

 さすが「木」の神様だけあって、気軽なものです。

 それぞれに名前を貰った木々は、最初は満足していたのですが、次第にまたもの足りなくなってきました。

 「木の神様すみません。せっかく名前がついたのですから、姿もそれぞれに変えて頂けないでしょうか」

 「うん。いいよ~。皆好きな葉っぱの形を選んで。背の高さも好きに決めていいよ~」

 しばらくはそれぞれの姿にうっとりとし、個性の違いを楽しんでいた木々でした。でも、やっぱりだんだん物足りなくなって来たグループがありました。全員が緑色というのも味気ないと思い出したのです。それは広葉樹と呼ばれる木々のグループでした。他に針葉樹と呼ばれるグループもありましたが、「我々は葉は細いが、細かいことは気にしない木だ」と、そちらは緑の葉で構わないということでした。

 広葉樹達は神様のところに行きました。

 「あの~、神様。何回も済みませんが、皆同じ緑色というのもいかがなものかと。たまにはちょっと葉っぱの色を変えて頂くとか、そういうわけには行きませんでしょうか」 

 度重なるお願いに、神様も少々うんざりしてきました。

 「う~ん。じゃあさ、緑の葉っぱだと飽きが来るということなら、秋が来たら赤や黄色に色を変えると言うことで、どう?」

 ちょっと面倒になって来た神様はダジャレで決めてしまいました。

 「ありがとうございます」

 ダジャレで決まった色でしたが、それでも広葉樹達は大喜びで帰って行きました。

 その様子を眺めていた他の神様達が、木の神様に言いました。

 「次から次に、難儀だねぇ。一難去ってまた一難、って感じだね」

 「しょうがないさ。枝葉末節にこだわるのが、木だもの」

 と、そこへ一本の木がやって来ました。針葉樹のイチョウでした(イチョウは本当に針葉樹なのです、念のため)。イチョウは目立ちたがりの面倒くさい性格の持ち主でした。針葉樹なのに、あの独特の葉っぱの形を選んだ木なのです、想像がつくかと思います。

 「え~と、神様。イチョウでございます。他の針葉樹は一年中緑の葉で構わないとか申しておりますが、私はあざやかな色が希望でして、一つその~」

 「分かった分かった。黄色、鮮やかな黄色。皆がハッとするような見事な黄葉の木にしてあげよう」

 「有り難うございます。それはもう感激でございます。ただ、欲を申しますと、もう一工夫と言いますか、黄色の葉の木は他にもございますし」

 さすがの神様も、心底あきれてしまいました。なんて欲が深いのだろう。

 「よし、こうしよう。葉の色はもう決めてしまったのだから変えられない。かわりにイチョウの実には匂いをプレゼントしよう。誰もがイチョウだと気付くような、独特な匂いを」

 「有り難うございます。有り難うございます」

 イチョウは喜んで帰って行きました。

 その姿を皮肉な笑顔で見送りながら、木の神様は呟きました。

 「一難去ってまた一難か。いや、一難去ってギンナンだ・・・」

                        終わり

 

 文中にも書きましたが、イチョウは本当に針葉樹なんですよ。信用して!では。