26日、日曜日。
所属する山のグループの岩木山(1625M、青森県最高峰)登山予定日でした。参加しようかどうしようか随分迷いました。でも、「自信が無くて・・・」と人に話している内に、「じゃあ、いつになったら自信がつくんだ?」という自分突っ込みが入り、「そうだ、今が一番若い自分だ。今頑張らなくてどうする」。決心しました。それからは毎日天気予報をチェックし、不安と期待でドキドキしながら当日を待ちました。
前日リーダーさんから連絡があり、天気予報があまり良くないので、出発時刻を1時間早めて7時出発とする、雨具を忘れずにということでした。日曜日の弘前市の予報は午前中曇り、午後からは雨というものでした。昼まではもって欲しい、強く強く願ったのですが。
どんよりと霧が立つ中、嶽温泉を出発して10分ほどもたったでしょうか。ポツンポツンと雨粒が落ちてきました。あ~降ってきたか~、辺りには雨粒の音が賑やかに響き始めました。ところが、私たちの体には雨はあまり当たらないのです。それは私たちの頭上に枝を伸ばすブナ林のお陰なのでした。
雨中の登山なんて嫌だけれど、こんな風にブナ林に守られる感じとか、大の大人(しかもおじさんおばさん)が、雨でズルズルで岩がゴロゴロの道を好き好んで行く酔狂さとか、こういうのも家に居ては経験できない面白さだよな~と、まだまだ余裕の私です。
「もう少し雨が降ってくると、ブナの幹を水が流れるのが見えますから」先導役の方の言葉です。
?、?、?。何を言っているのか意味が分かりませんでした。まあ、その内に分かるだろうと思いながら歩を進めました。雨脚も次第に強くなってきて、「ブナの傘」も心細くなってきました。
「じゃあ皆さん、上だけでいいのでカッパを着て下さい」
そうですね、いくらブナ林でもその方がぶなんですね。
先導役の方は分かりやすく「カッパ」と言いますが、皆さんちゃんと山用のレインウエアです。私も昨秋買って、今日がデビューです。レインウエアは、雨は通さず中の蒸気は逃がすという高機能がうたい文句ですが、やっぱり暑い。いわゆる蒸し風呂状態ってやつです。
「結局、雨で外から濡れるか汗で中から濡れるか、なんですよね」
リーダーさんの仰るとおり、顔も体も自分の中にこんなに水分があったかと驚くほどの汗です。もともと暑さに弱い質で、レインウエアを着て、暑さと格闘しての登りはきつかった。やはり止めておくべきであったか、いつも通りちょっと後悔の念が芽を出し始めました。
「ほらみて下さい。ブナの木の、水の流れがハッキリ見えるでしょう」
写真が下手なのですが、写真真ん中あたりの幹と空の境目を、水が勢いよく流れているのがお分り頂けますでしょうか。先導役の方が仰る「水の流れ」です。
家に帰ってからネットで調べますと、これは「樹幹流(じゅかんりゅう)」と呼ばれるもので、ブナ特有のものらしいです。
ブナは、葉も枝も幹に向かって雨を集めるように茂っていて、その集められた雨水はブナの滑らかな幹を、樋を伝わるように流れ落ち、自分の根元へと水を集中的に落とし込むのだそうです。「緑のダム」ともいわれるブナ林の、豊かな保水力の秘密の一端がここにあります。
実際にブナの幹を流れ落ちる水をみると(詳しいことは調べるまで分かりませんが)、ブナはこうして水を集めているのだろうという想像はつきます。その清浄な美しさと神秘的な感じにハッとすると同時に、自然の仕組みに感心させられるのです。
そして、ここでいつもの「来て良かった」という思い直しが始まるのですが、今回はさらに「雨の日も悪くない。雨で無ければ見られないものが見られた」も加わりました。
取りあえず8合目まで、8合目まで頑張って、その先は8合目で考えよう。頑張れ自分。続く。
↓ 熊の噛み痕のある道標。熊に遭遇したら、くまっちゃうなあ~♪