アオモリトドマツという木をご存じでしょうか。正式にはオオシラビソという名前ですが、青森県に多くみられるため、その名がついたと言うことです。積雪の多い高山に自生する木です。蔵王と言えば樹氷で有名ですが、あの「樹氷」と呼ばれる姿になるのが、このアオモリトドマツです。
近年、害虫の食害によるアオモリトドマツの枯死が問題となっているのですが、それ以前に、アオモリトドマツという木は、もともと「立ち枯れる」という特徴のある木なのです。
アオモリトドマツの地元(?)青森県の住民である私は、以前から「アオモリトドマツはなぜ立ち枯れるのだろう?例えば、ブナなど他の木は強風で根こそぎ倒れて枯れるのに」漠然とそういう疑問を感じていました。
今回、八幡平山頂駐車場をめざす道の途中でも、車窓からは、至る所に白く乾いた幹をさらすアオモリトドマツの姿がみえました。
「なぜだろう。一帯が枯れているわけではないから、害虫ではないのだろう」
ボンヤリと疑問に感じていました。
大沼の周りを歩きながら撮った一枚です。木道の左に写っているアオモリトドマツの姿をご覧下さい。木の上の方が枯れているのがお分りいただけるかと思います。
この写真は何気なく撮ったのですが、この後思いがけない働きをしてくれることになりました。
散策を終えてビジターセンターを見学したのですが、展示の中に、立ち枯れた姿のアオモリトドマツもありました。私は思いきって職員の方に質問してみました。
私 「アオモリトドマツは展示にもあるような、枯れた姿を良く見るのですが、なぜなのでしょうか?」
職員 「そうなんです。キクイムシの被害ですかと聞かれたりもするのですが、そうじゃない場合もあるんです。冬期間の過酷な環境によるものと思われますが、はっきりとしないところもあります」
私は上の写真を見せながら、更に尋ねました。
私 「この写真の木の、上の方は枯れてますよね」
職員 「おそらく、下の方は雪に埋もれて逆に強風から守られ、上はもろにさらされるからだと思います」
なるほど、納得しました。「雪に埋もれる」=過酷な環境と思ってしまいますが、天然の掛け布団効果があるのですね。
樹氷の写真などをみると、良くもこんなところに生育できるものだと驚かされますが、あの姿にこそ、アオモリトドマツの生き残り戦略があったのかもしれません。
蔵王ではキクイムシの食害により、アオモリトドマツが激減しているのだとか。極寒の風雪に耐え生き延びようとしているアオモリトドマツです。害虫にも打ち勝って、(樹木の)王の中の王、ザ・王となって欲しいと強く思います。続く。