おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

人間国宝・坂東玉三郎

 映画『国宝』をみてから、ことあるごとに、歌舞伎の立女形(たておやま)坂東玉三郎さんの凄さを思い出していました。

 ※「さん」付けは何だかピンと来ないので、以下、歌舞伎らしく「丈(じょう)」にします。

 立女形とは、歌舞伎の女形の中で最も位の高い役者のことだそうで、その最高峰と言われるのが坂東玉三郎丈です。現在、歌舞伎役者の人間国宝は六人ですが、女形として選ばれているのは玉三郎丈ただ一人だと、ネットで知りました。

 『国宝』の感想で書きましたが、私は歌舞伎の生の舞台はまだ一度も観たことがないのです。にもかかわらず、坂東玉三郎という女形の芸の力、圧倒的とも言うべき存在感を、まざまざと見せ付けられた経験があるのです。

 少し記憶があやふやなのですが、2、3年前に上野の東京国立博物館を訪れた時の事です。確か、能装束を展示していたコーナーだったと思うのですが、傍らには大型テレビが設置され、その展示に(多分)関連した舞踊のステージが映されていました。その舞手が豪華な衣装に身を包んだ坂東玉三郎丈でした。ちょうど区切り良く始まったばかりのところでした。

 「あ、玉様だ!少し見ていこう」

 軽い気持ちで立ち止まった私でしたが、もう動けませんでした。最後まで見続けて、最初に戻った時点で展示室中央のソファに腰を下ろしました。すぐに立ち去る気にならなかったからです。そして、その後の展開にさらにびっくり。

 みんななの!ほとんど全員なのよ!

 パラパラと展示室に入って来た人達は、映像に気付くと、最初は「玉三郎だね」と軽く目をやる感じなのですが、だんだん、だんだん、引きづり込まれるようにテレビに向かいあっていって、いつの間にか5、6人がテレビを取り囲み、5分、10分、長い人は最後まで見続けてしまうのでした。

 みんなが、ほとんど全員が、その展示室の中で一番長く見惚れるのが坂東玉三郎丈!凄いことです。数々の国宝を所蔵する東博ですが、あの日の一番人気は、人間国宝坂東玉三郎だったかもしれません。

 いつか機会を得て、生で見てみたいものです。坂東玉三郎丈の舞台。

 私の未来の目標という意味を込めて、「あしたの丈」と呼びたいと思います。では。