「国宝」という響き、心躍るものがありますね。
その国宝である『曜変天目茶碗』を、3月4日、丸の内の明治生命館(重要文化財)1階にある静嘉堂文庫美術館にて拝見いたしました。
静嘉堂文庫美術館は三菱二代目社長・岩崎弥之助と四代目・小彌太の、父息子二代にわたって創設・拡充された美術館だそうで、国宝七件を収蔵するそうです。そのうちの一件が有名な「曜変天目茶碗」というわけです。
曜変天目茶碗の完品は世界に3つしかなく、しかもその3つは全て日本にあり、3つ全てが国宝という、希少性の上に物語性まで加わる、有り難い有り難い茶碗です。期待の上に期待が膨れ上がり、
「だめだぞ自分。冷静に冷静に。静かに向かい合ってこそ湧き上がる喜びがあるんだぞ」
そんな風に自分で自分に言い聞かせ、そうして臨んだ「曜変天目茶碗」との出会いでした。が、ぎゃー、失敗した。
壁際の展示を見ていて何気なく振り返ったとき、部屋の真ん中、ちょうど私の真後ろに、ガラスケースに入った「曜変天目」が、ちらっと見えたんですよ。息をのみました。深い青色がキラキラと輝いて、本当に宇宙か深海のような「青」で、なんと私は反射的に目を閉じて背中を向けてしまったのです。
「勿体ない勿体ない、後でじっくり見よう」
ああ、失敗した。その時しっかり見れば良かった。その瞬間の輝きを見尽くせば良かった。その後でじっくりと眺めた曜変天目は、二度とあの煌めくような輝きを見せてくれることはなかったのでした。一期一会とはこのことか・・・。
天目茶碗の写真撮影は禁止でしたので、かわりに下の説明板の写真を撮ったのですが、この説明がとても面白かったのです。字が小さくて読みづらいと思いますので、私が特に面白いと思った部分をさらに拡大して載せますね。
家光のために、苦しい病床にあっても「薬断ち」を貫いた春日局。これだけの「愛」に報いようと思えば、曜変天目茶碗も惜しくはなかった家光。どちらも凄いなあ。
そして、岩崎小彌太夫人。こちらも凄いなあ。
夫・小彌太が「天下の名品、私に用いるべからず」と生涯一度も使用しなかった茶碗。その茶碗を小彌太の三回忌の献茶とはいえ、使えます?許可を取るべき夫は亡くなっているのですから、「使う」のは夫人の決断だったと思うんです。
どういう家柄の人だったのだろう?調べましたとも。
岩崎 孝子は、日本の華族。岩崎小弥太男爵夫人。
島津珍彦(うずひこ)男爵令嬢。母は島津斉彬の四女・典子。虎屋が販売するゴルフボールを模した最中「ホールインワン」を考案した人物として知られる。 ウィキペディア
島津斉彬のお孫様なのね。なんとなく納得。そして、虎屋の最中「ホールインワン」の考案者というところも面白い。
「曜変天目の青に抹茶のグリーンはきっと素敵よ。パーっと使っちゃうわよ」
こんな感じ、「ホールインワン」の考案者にぴったりじゃ無いですか、ね。では。