オー・ヘンリー作「賢者の贈り物」は、かつてテレビCMでストーリーが語られたこともあり、日本でもすっかりお馴染みになったクリスマスの物語です。
貧しく若い夫婦の、クリスマスプレゼントをめぐるお話です。妻は夫の宝物の「懐中時計」に付ける鎖をプレゼントするために、美しい「髪」を売ります。夫は愛する妻の美しい髪を飾る「櫛」を買うために、時計を売ってしまいます。せっかくの二つのプレゼントは無駄になってしまうのでした・・・。
でも物語の最後は、次の様な著者の言葉で締めくくられます。
プレゼントをやりとりする人々の中で、この二人のような人たちこそ、最も賢明な人である。彼らこそ「賢者」なのだ。 |
ずっと疑問に思っていました。なぜ「賢者」なの? この夫婦が愛と思いやりに満ちているのはわかります。でも、「賢い」というより、「愚か」って感じじゃない?どう解釈したら「賢者」になるの?
答は原題にありました。
原題は、「The Gift of the Magi」です。「Magi」が鍵を握っています。英語の発音では「マージェイ」みたいな感じですが、日本ではラテン語読みの「マギ」が一般的です。
イエス・キリストが降誕したとき、夜空には星が輝き「ユダヤの王」の誕生を告げました。星に導かれた東方の三博士がイエスの下へ「贈り物」を携え、やってきます。有名な「東方三博士の礼拝」または「マギの礼拝」と呼ばれる逸話です。「マギ」とは「博士」の意味です。絵画にも多く描かれたシーンです。
三人の「マギ」は嬰児イエスに最もふさわしい、「黄金・乳香・没薬」の三つを贈りました。心からの敬意と恭順の意を込めた贈り物です。若い夫婦にとっての「鎖」と「櫛」は、まさにそのような贈り物だというわけです。
あー、すっきりしました。
「マギ」は英語の「マジック」の語源だそうです。マギは占星術などを行う、不思議な力を持った存在ということから、そうなったのだと思われます。
マギを導いた光り輝く星とは、「彗星」の事ではなかったかという説があるそうです。そう言えば、マジックには、油性の他に、「すいせいマジック」もありますね。納得です。