おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

トヨタ産業技術記念館

 名古屋市の『トヨタ産業技術記念館』見学の記録です。

 『トヨタ産業技術記念館』は繊維機械館と自動車館の二館で構成されています。私は車にはあまり知的好奇心が向かないので、繊維機械館の方が圧倒的に面白かったのです。

 そして、分かったことがあります。

 人間は何の取っ掛かりもない対象は、ただ「ボーっ」と虚ろに眺めているしかなく、何らかの、自分のアンテナに引っ掛かってくるものがあって、初めて好奇心が芽生えるのだということです。例えば違和感とか、既知の事柄との繋がりとか、美的感覚に訴えてくるとか。

 

 この写真は「研究と創造の精神」を語る記念館のシンボル、環状織機です。

 「ふ〜ん、筒状の織物が織れる機械ね」

 一応写真は撮ったものの、何の興味も感じなかった私は、全く注意を払うこともなく通り過ぎたのでした。その後、「実演が始まります」のアナウンスが耳に入って来たのですが、それが丁度このすぐそばに戻って来ていたときだったので、「まあせっかくだし」ぐらいの気持ちで実演を見、解説を聞いたのでした。

 その結果、私の知的好奇心は満開状態、大興奮となったのでした。

➀縦糸は上糸と下糸が交互に入れ替わりますよね

 解説員の方が上のようにおっしゃった時、ハッとさせられました。確かに。普通の機織り機って、足を使ってバッタンバッタン、上糸と下糸を入れ替えて、その間に緯(よこ)糸を滑らせるよね。えー、じゃあこの環状織機だとどうなるの?

 縦糸が前後に分かれている様子、お分かり頂けますでしょうか。

 「わー!」

実演を見ていて思わず大きな声を出してしまいました。

 

②緯(よこ)糸のシャトルは、普通は往復しますね。

 またまた解説員のお言葉に、虚をつかれる私。そ、そうよね、環状だもの、往復運動じゃあ無いわよね。

 指示棒が指しているリング、なんと、この中を緯糸を納めたシャトルがグルグル回転するのだそうです。指示棒の真下に、黄土色のブーメラン形の物が展示されていますが、それがそのシャトルです。リングが右下がりに斜めになっていますが、このときはシャトルは右下に位置しています。そしてリングが右上がりに動いた時には中のシャトルは左側に向かって滑り落ちて行くという仕掛けなのです。凄い!本当に凄い!

 

 この環状織機は、1906年明治39年)、豊田佐吉によって発明されました。その開発の動機は大きく二つあるそうです。解説員さんのお話をざっくりとまとめるのですが、うろ覚えの部分もあります。ご容赦。

 先ず1つ目は、従来の往復運動の織機で生じているエネルギーのロスを減らしたいということです。そうですよね、体育館を円く走るより、シャトルランの方が何倍も疲れますよね。円運動はたしかに効率的。さすが、コストカットのトヨタ、そう思いました。

 2つ目は、静かな機械、静かな職場環境を従業員のために、ということだったそうです。環状織機、静かでしたよ。

 

 ところが、こんなにも素晴らしい環状織機でありながら、実際には普及することはありませんでした。その理由は、縦糸が切れた時にはいち早く発見して繋ぎ直さなければならず、そのためには機械の周りに何人もの人を置く必要があり、結局コストがかさんでしまうからでした。

 しかし、その「研究と創造の精神」こそ、トヨタグループの「モノづくり」の基本理念であると、そういうわけで、この環状織機の動態展示が行われているのでした。

 どうです、皆さん。「環状織機、見てみたい」、そんな好奇心にかられませんか?大きく気持ちを動かされませんか。そう、豊田佐吉の環状織機は、私達の心を動かす「感情」織機。研究という縦糸と創造という緯糸で織り成すもの、それは感動という名の布なのでした。わー、上手いことまとまったー。続く。