おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

病院で名前を呼ばれて

 1週間前に出来た唇の端っこの吹き出物。自然に潰れるだろうと様子をみていたのですが、どんどん大きくなって、触ると痛い。自分で搾る勇気が出なくて(だって凄く痛い!)、珍しく皮膚科を受診しました。珍しくというのは、面倒くさがりなのと、「大したことは無いだろう、放っておけば自然に治るさ」と何でも楽天的に考える性格のせいでめったに病院に行かないからです。それに、もともと丈夫が取り柄なので(自慢)

 その病院では、患者を「〇山〇子さ〜ん」とフルネームで呼びます。最低3回かな。待合室へ、診療室へ、会計です、で計3回。

 呼ばれるたびに「は〜い」と、返事をする自分。今どき珍しいタイプだということは分かっています。でも、子供の頃に母親から「呼ばれたら返事」と徹底的に仕込まれたので、返事をしないではいられない。もうね、条件反射。名前を呼ばれて返事をしないとどうにも落ち着かないのです。

 さて。

 私の前の男性、30歳前後かな?その方の名前が呼ばれた時、ぎょっとしました。ある重大事件の犯人と同姓同名だったのです。最初は聞き違いかとも思いました。が、2回目、3回目、間違いないなくその名前でした。ご本人のお気持ちは分かりませんが、私は勝手に何ともお気の毒な気持ちになりました。その方は勿論、名付けた親御さんのことも。まさか、後にそんな風に同姓同名になるなんて考えもしなかったでしょうからね。

 昔、新聞で『角栄ちゃん、改名認められる』という記事を読んだことがあります。

 田中角栄氏が総理大臣になった年に生まれた息子に角栄命名。ところがロッキード事件の後は名前のせいでイジメられるように。そこで裁判所に改名を申し出たところ認められたと、そういう内容の記事だったと思います。

 親が子を思って愛情を込めて名付けても、思いがけない結果になってしまうのは、それはもう運というか、仕方のないことでしょう。

 60年以上生きても、どうということもない普通の名前のままで、呼ばれて返事をしても「ただの珍しい人」で済むというのも、ささやかな幸運なのかもしれません。

 話をそもそもの吹き出物に戻します。

「脂がかなりたまっていますね。搾り出しますから」と、先生は早速処置し始めました。

 痛い、痛い、痛い。もう限界、ギブアップしようと思った瞬間、先生の手が離れました。

「かなり出ましたけど、まだ残ってますね。もう一度来て下さい」

 診察室を出て、待合室でお会計を待つ間、もう一度あの搾り出す痛みを味わうのかと憂鬱でした。3回目の名前を呼ばれ、返事はしたものの、きっと元気のない小さな声だったろうと思います。子供の頃に何か仕出かして、母に絞られた時のように。では。