Youtubeで『テレフォン人生相談』というラジオの番組をよく聞きます。
パーソナリティーに、社会学者の加藤諦三先生という有名な方がいらっしゃいます。先生は相談者に対して、しばしば同じ言い回しを用いられる事があるのですが、今日はその中の一つについて、書きたいと思います。
夫婦関係について悩んでいるという相談に対して、何回か聞いたパターンがあります。
相談者 「結婚してすぐから喧嘩が絶えないんです」
加藤先生「お二人はあれ?恋愛結婚?」
相談者 「はい」
加藤先生「一目惚れ?」
相談者 「はい、まあそうですね」
加藤先生「あなたその頃、寂しかった?あるいは人生が退屈だった?」
相談者 「寂しい・・・、そう、そうですね」
加藤先生「でしょうね。一目惚れって言うのはね、寂しさと肉体的欲求不満。相手が本当に好きで好きになってんじゃないから。確実に破綻します」
こんな感じで、相談者から「一目惚れ」というワードが出ると、一刀両断に言い放ちます。そしてこの後、どうしたらいいのかについて懇々と説くわけですが、聴き応えありますよ。なるほどなあと思わせられます。
ただ困るのは、この言葉に出会ってから、テレビや実生活で(あまりありませんが)、「一目惚れなんです」というセリフを聞くと、心の中で「寂しくて欲求不満だったんです」と変換されてしまうことです。
数日前にNHKBSで、再放送の『八つ墓村』というドラマを視ました。金田一耕助役は吉岡秀隆さんでした。
ドラマの中で蓮佛美沙子さん演じる娘さんが、ある男性に一目惚れをするのです。その娘さんは横溝正史お得意の「呪われた家系」の娘であり、陰惨な過去の出来事を体験しています。しかも、体が弱いために婚家から戻されてきたという立場です。
その彼女が一目惚れの相手に向かって、叶わぬ恋と知りながら「最初にあったときから」と打ち明けるのですが、その時もやっぱり加藤諦三先生の言葉を思い出したのでした。
いつもなら、それを思い出す時はちょっとシニカルな気分なのですが、この時は違っていました。その女性の底なし沼のような孤独感が胸に迫りました。その沼から這い出るために、必死にすがりつこうとする気持ち、それが一目惚れの正体なのだろうと思いました。
「確実に破綻する」、そうでしょうね。底なし沼に沈んでいる人間にすがりつかれては、一緒に沈むしかないのですから。俗に、「恋の病はお医者様でも草津の湯でも治せない」と言いますが(古い?)、その恋の根っこが孤独の寂しさであるならば、それはやっぱり治しがたいものだろうと思います。
寂しくて寂しくて、その寂しさから逃れたくて激しい恋をするのだけれど、「確実に破綻します」なんて、まるで呪いのようじゃないですか?それとも、あれ?『たたりじゃ~』ってやつなんですかね?
なんだか無理矢理こじつけたようなまとめになりましたが、『八つ墓村』という「墓」が八つあるドラマから、一目惚れははかないという話題を書きました。では。