おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

レトロニムあるいは再命名

 英語では「レトロニム」、日本語では「再命名」という用語があるのはご存じでしょうか。どちらもとても新しい言葉です。同じ意味を持つ二つの用語ですが、先に出来たのは日本語の「再命名」の方だそうです。

 「再命名」は、1976年に言語学者鈴木孝夫氏によって用いられたのが最初だそうです。

 「レトロニム」は、1980年、アメリカのナショナル・パブリック・ラジオ局の局長が造語し、その後コラムニストがニューヨーク・タイムズの中で使用したことで広まったそうです。「再命名」「レトロニム」とは、ある言葉の意味が時代とともに広がったり変化した場合、もともとの意味の範囲を特定するために、新しく考案された言葉を指します。

 例えば、もともとは「電話」と言えば「電話」しかありませんでした。ところが、「携帯電話」の登場により、もともとの意味での電話に対して「固定電話」という「再命名」「レトロニム」が登場したわけです。

ja.wikipedia.org

 上記Wikipediaの一覧はなかなか面白いので、お時間ありましたらぜひ御一読を。

 私が特に「へー」と思ったのは、「有観客試合」です。試合は観客がいるのが当たり前でした。ところがコロナ禍によって「無観客試合」が主流となったため、観客を入れての試合が「有観客試合」と再命名されたという、2020年生まれのレトロニムなのです。

 もう一つ、私は、最近の「トランス女性」という言葉の出現によって、もともとの意味での女性に対してはどの様な再命名がなされるのだろうかと思っていたのですが、既に解決済みのようです。上記一覧に、「トランスジェンダー」に対して「シスジェンダー」というレトロニムがあったのです。ということは、「トランス女性」に対しては「シス女性」でオッケーなのだろうと思います。

 

 そもそも、私がなぜ「再命名」「レトロニム」という用語を知ったかと言いますと、ある場所で「純喫茶」という言葉を何十年ぶりかで耳にした事がきっかけです。友達に、「純喫茶って、懐かしい言葉じゃない?」と言いましたところ、友達の返事は、

 「懐かしい!ところで純喫茶って、どういう基準で純喫茶なんだっけ?」という質問付きのものでした。

 「お酒を出さない、だと思ってたけど。改めて聞かれると自信が無い・・・」

 友達は次の様に言葉を続けました。

 「私の高校では、喫茶店は禁止だったんだよね(昭和50年代)。それで先生に、純喫茶も駄目なんですかって質問した人が居て。それが私と純喫茶っていう言葉との出会いだった気がする」

 その後二人で、昭和50年代の地方の高校生にとって、喫茶店というものがどれ程憧れの存在だったかについて、熱く語ったのでした。純な話じゃないですか。

 

 その夜、「そう言えば、純喫茶はお酒を出さない、という私の認識は正しかったのかな」と気になり、調べたのです。そこで出会ったのが「レトロニム」という用語だったのです。

純喫茶じゅんきっさ)とは、酒類を扱わない、純粋な喫茶店のこと。酒類を扱い、女給ホステス)による接客を伴う特殊喫茶カフェー)に対してのレトロニム的な呼称。

                     Wikipediaより

 ああ良かった、間違ってなかった。

 そう思うと同時に私の脳裏に浮かんだのは、しめた!これはブログネタになる、というちょっと不純な思いがあったことも正直に告白したいと思います。喫茶だけにお茶を濁すこと無く、では。