20世紀を代表する建築家の一人に、ドイツ人のルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエがいます。
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ - Wikipedia
建築に詳しくない人でも(私も詳しくないですが)、
「God is in the details 」(神は細部に宿る)とか「 Less is more」(より少ないことはより豊かなこと) といった、彼の掲げた標語は聞いたことがあるかもしれません。
あるいは、「美は細部に宿る」という言い回しならどうでしょうか。こちらは本来の「神は」がいつの間にか改変されて、広く人口に膾炙しているということのようです。どちらにしても、小さな事をおろそかにしてはいけないとか、細部にこそ作者のこだわりや技術の粋がこらされているといった意味でしょう。
昨日の記事で、私のひな人形を紹介しました。飾った年数より箱にしまったままの年数の方が多いせいか(苦笑)、50年近い年月を経ているのですが、傷みが少なく結構綺麗です。
私は決して几帳面な性格ではないのですが、一日中家に居てしょっちゅう目に入るせいか、今年に限って「房の乱れが許せない」気分になりました。そこで、寝癖を直すように水をつけてブラシを入れたところ、びっくりするほど簡単に房が整ったんです。
そして、さらに驚いたのがお雛様の雰囲気が変わった事でした。なんというか、お姫様としてあるべき姿と言いますか、「ちゃんとした」お雛様になったという感じでした。
世の中には「目利き」とか「審美眼がある」といわれるような方たちがいて、そういう方であれば建築や工芸や芸術や、様々な対象物の細部に宿る「美」や「技」をたちまち見抜くのでしょう。残念ながら普通の目しか持っていない私などは、ついつい表面的な派手な美しさに目を奪われがちです。
ところが今回、お雛様の房の乱れが気になって思ったのです。
細部など見逃しがちな素人にあっても、おろそかな部分は、(作り手の側にとって恐ろしいことに)意外と素人の目にも明らかとなるものなのかもしれないと。
そして、そんな風に考えたとき、思い出したのがローエの言葉だったのです。
スポーツの世界では、
「(練習を)一日休むと自分に分かり、二日休むと相手に分かり、三日休むと皆に分かる」という言葉があるそうです。毎日必死に練習しても上達は中々しないのに、駄目になるのはあっという間ということなのでしょう。
小さな事を丁寧に積み上げてこそ、その上に偉大な成果が築かれるというのは、全ての分野において共通のことなのかもしれません。そんな風にローエの言葉を解釈すると、正に建築家にぴったりの名言という感じがします。
土台をゆるがせにしては建築家の仕事は成り立たないということで、どうだい?では。