おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

雪国でブーツを買うときは 2

 まだ新しかったブーツの片方の踵を落としてしまった私は、玄関先で地団駄を踏んで大暴れしたい気分でしたが、おばさんが一人プロレス状態というのもあまりに見苦しいので、思いとどまりました。

 そう言えば、プロレスでは悪役・敵役のことを「ヒール」と言いますね。反対は「ベビーフェイス」。ヒールを落とした私は、プロレス風に言うなら悪役ではなくなった事になると思うのですが、さすがに「ベビーフェイス」を名乗るほどは図々しくはないです(笑)。

 

 踵を落とした次の日、木曜日です。友達からデパートでセールをやっていると聞き、ブーツを買いに行きました。

 売り場で店員さんに、「これは防水ですか」としつこく質問を重ね、性能・デザイン・価格、すべてにおいて納得の一足を買うことができました。

 新しいブーツを手に入れた私は、家に帰ったら、駄目になったブーツをすぐに燃えるゴミの袋に入れようと決心していました。いくら物をなかなか捨てられない私とはいえ、踵の無いブーツ、しかも水に濡れてシミにもなっているはず、何の躊躇も無く捨てられるはずです。

 さて、玄関にて。

 改めて捨てる予定のブーツを手に取って眺めてみると、まだまだ新しいよなー。しかも、雪解けの水できれいだったせいか、全然シミにもなっていない。右の踵さえあればなー。

 はっ、としました。

 今までは捨てるしか無いと思い込んでいたから、思いつかなかった!踵を落とした場所はだいたい目星が付いている、探しに行ってみればいいんだ。この日はもう暗くなっておりましたので、明日探しに行こう、そう心に決めました。

 

 金曜日。この日も雪は積もりませんでした。例年であれば、水曜日に落とした物は雪の下に埋もれてしまって、金曜日に見つかるわけなど無いのです。暖冬に一縷の望みを託して、心当たりの場所へと向かいました。発見した場合に備えて、ポケットにはナイロン袋が忍ばせてあります。10分ほど歩き、先日、足の裏に異変を感じた場所へ。ドキドキしてきました。上り坂の行く手に、輪ゴム色の何かが落ちています、ドキドキ。

 「やったー、あったー!」、心の中で大声で叫びました。

 

 こうして無事踵の回収に成功し、その日の午後には修理屋さんで450円でしっかりと貼り付けてもらい、私のブーツを巡る冒険の物語は、めでたしめでたしとなったのでした。

 暖冬のせいで踵を無くし、暖冬のお陰で無事に発見。「禍福はあざなえる縄のごとし」とは、このことでしょうか。

 禍福が入れ替わるように、踵を失ってヒール(悪役)では無くなったと思った私ですが、踵が戻ってきました。それならば、もしも私がプロレスラーになるならば、やはり見た目通り、そして性格通り、ヒール(悪役)としてやっていこうと思ったのです。

 得意技はもちろん、踵落とし(決まった!)。では。