昨日に続いて、ローマのスリのお話です。
あいにくの雨の中、私たちを乗せたツアーバスは、有名な『トレビの泉』を目指して走っておりました。車中では、添乗員さんから、次のようなお話がありました。
これからご案内するのは、コイン投げで有名な『トレビの泉』です。このコイン投げについて、何枚投げればいいですか、という質問を受けることがありますが、実は、投げるコインの枚数で意味が決まっているんです。
1枚投げれば、またローマに来ることが出来る。2枚は好きな人と結ばれる。そして、3枚投げれば、嫌な人と別れられるのだそうです。
以前、この話をしましたところ、お客様の中で「じゃあ、俺は6枚投げる」と言った方があったんですね。どういうことかと聞きましたら、「3枚でまず今の女房と離婚する。2枚で別な相手と再婚する。そして、最後の1枚で、新婚旅行はローマに」。
バスの中の一行は大笑い。その笑いが治まるのを待って、さらに注意事項がありました。
まもなく到着します。トレビの泉でコインを投げる方は、今からコインを準備して下さい。泉では、絶対にお財布を出さないで下さい。泉の周辺にはスリが絶対います。お財布を出すと、必ず目をつけられます。どこにしまったか、見ているんです。そうしたら、絶対すられますから。繰り返しますが、お財布は絶対に出さないで下さい。
ひえ~、恐ろしい。「絶対にすられる」って、私たちの前世は「生姜」か「大根」かと思うほどです。私は息子達に念を入れました。
私 「コインを準備しなさい。その時になって財布を出したら駄目なんだから」
息子その1 「俺、やんねーから」
息子その2 「同じく」
私 「えっ、なんで。なんでやんないの?」
息子達 「意味ねーじゃん」
私 「・・・、うーん、そう言われるとそうね。雨だし、お母さんもいいわ」
さて、トレビの泉に着きました。雨脚は結構強かった。
ツアーのメンバーはゾロゾロと泉に向かいます。雨にもかかわらず、観光客はそれなりにいるうえ、傘が邪魔になるので、「コイン投げ」も一仕事です。私たち三人は、その様子を離れたところから眺めていました。そう、三人で。
私と息子二人は、その時ニヤニヤしながら待っていたのかもしれません。
そんな私たちのところへ、いそいそと夫が戻ってきました。夫は驚いたように言いました。
「三人ともコイン投げはやらないの?」
私たちは「うん」とうなずきました。「雨だし」と付け加えたかもしれません。
さすがに息子達も、コイン投げに満足げなお父さんに向かって、「意味ねーじゃん」とは言いませんでした。
旅行中は驚きや感動の連続ですが、時間がたってみると、案外、こういった小さな出来事が記憶に残っているものですね。また、こうやってブログに書いてみると、忘れていたことも蘇ってきたりして、なかなか楽しいものです。
ところで、書いているうちに気になりだしたのですが、家族の中でたった一人、「トレビの泉」に願いをかけた夫ですが、投じたコインは何枚だったのでしょうか。私もやっていれば、二人で枚数のすり合わせをするのですが、自分がやっていない以上、聞くに聞けないかも。
(トレビの泉周辺の凄腕スリの話、最後はやっぱり、カモになりました。こわいこわい。)