おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

トレビの泉の、凄腕スリの話

 昨日に続いて、ローマのスリのお話です。

 あいにくの雨の中、私たちを乗せたツアーバスは、有名な『トレビの泉』を目指して走っておりました。車中では、添乗員さんから、次のようなお話がありました。

 

 これからご案内するのは、コイン投げで有名な『トレビの泉』です。このコイン投げについて、何枚投げればいいですか、という質問を受けることがありますが、実は、投げるコインの枚数で意味が決まっているんです。

 1枚投げれば、またローマに来ることが出来る。2枚は好きな人と結ばれる。そして、3枚投げれば、嫌な人と別れられるのだそうです。

 以前、この話をしましたところ、お客様の中で「じゃあ、俺は6枚投げる」と言った方があったんですね。どういうことかと聞きましたら、「3枚でまず今の女房と離婚する。2枚で別な相手と再婚する。そして、最後の1枚で、新婚旅行はローマに」。

 

 バスの中の一行は大笑い。その笑いが治まるのを待って、さらに注意事項がありました。

 

 まもなく到着します。トレビの泉でコインを投げる方は、今からコインを準備して下さい。泉では、絶対にお財布を出さないで下さい。泉の周辺にはスリが絶対います。お財布を出すと、必ず目をつけられます。どこにしまったか、見ているんです。そうしたら、絶対すられますから。繰り返しますが、お財布は絶対に出さないで下さい。

 

 ひえ~、恐ろしい。「絶対にすられる」って、私たちの前世は「生姜」か「大根」かと思うほどです。私は息子達に念を入れました。

  「コインを準備しなさい。その時になって財布を出したら駄目なんだから」

 息子その1 「俺、やんねーから」

 息子その2 「同じく」

  「えっ、なんで。なんでやんないの?」

 息子達 「意味ねーじゃん」

  「・・・、うーん、そう言われるとそうね。雨だし、お母さんもいいわ」

 

 さて、トレビの泉に着きました。雨脚は結構強かった。

 ツアーのメンバーはゾロゾロと泉に向かいます。雨にもかかわらず、観光客はそれなりにいるうえ、傘が邪魔になるので、「コイン投げ」も一仕事です。私たち三人は、その様子を離れたところから眺めていました。そう、三人で。

 私と息子二人は、その時ニヤニヤしながら待っていたのかもしれません。

 そんな私たちのところへ、いそいそと夫が戻ってきました。夫は驚いたように言いました。

 「三人ともコイン投げはやらないの?」

 私たちは「うん」とうなずきました。「雨だし」と付け加えたかもしれません。

 さすがに息子達も、コイン投げに満足げなお父さんに向かって、「意味ねーじゃん」とは言いませんでした。

 

 旅行中は驚きや感動の連続ですが、時間がたってみると、案外、こういった小さな出来事が記憶に残っているものですね。また、こうやってブログに書いてみると、忘れていたことも蘇ってきたりして、なかなか楽しいものです。

 

 ところで、書いているうちに気になりだしたのですが、家族の中でたった一人、「トレビの泉」に願いをかけた夫ですが、投じたコインは何枚だったのでしょうか。私もやっていれば、二人で枚数のすり合わせをするのですが、自分がやっていない以上、聞くに聞けないかも

(トレビの泉周辺の凄腕スリの話、最後はやっぱり、カモになりました。こわいこわい。)

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