おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

まつげの俳句

 私の「まつげ」は、濃くて長いのです。事実です。と書きますと、皆さん、どういうイメージを持たれますか?

 濃くて長い「まつげ」と言えば、美少女の枕詞のようなものですよね。また、成人女性に対して、「長いまつげに濃く縁取られた眼」と表現すれば、どこか神秘的なムードが漂いますよね。でも、それって「上まつげ」に限るって、お気づきでした?

 

 私の濃く長いまつげは、「下まつげ」限定なのです。同じ「まつげ」でありながら、「上」と「下」では、もたらす印象がまるで違うのです。私が知る限り、このことにハッキリと言及したのは、青森県が誇る消しゴム版画家、故・ナンシー関さんでした。

 ナンシーさんは、消しゴム版画で似顔絵を作る際、下まつげを入れるか入れないかは非常に大きなポイントだと書いておられたように記憶しています。簡単に言うと、「下まつげ」が目立つ顔は、一癖ある顔になると言うことのようでした。そして、「下まつげ」を入れる代表としてあげていたのが、「林真理子」さんだったと記憶しています。確かに、林真理子さんはご自身の似顔絵も、「下まつげ」がバッチリ入ったものをお使いですね。

 私はつくづくと、遺伝というものの不思議を思わずにはいられません。なぜ、私のまつげはよりによって、「下」が長いのでしょうか。よりによって・・・。

 

 雛の軸睫毛向けあひ妻子睡る   中村草田男

 大好きな一句です。大好きと言うより、「凄いな~、上手いな~」と嘆息してしまうのです。

 ひな人形が描かれた掛け軸が飾られた和室。そこに敷かれた布団の中では、幼い娘と若い妻が抱き合うようにして健やかな眠りの中にある。一家のささやかな、満ち足りた幸福感が伝わってきます。

 でも、私が一番感心するのは、「睫毛」という単語の持つ「両義性」の魅力が遺憾なく発揮されている点です。睫毛を向け合うのですから、この場面の「睫毛」は、子(娘)と妻と、二人それぞれの睫毛をクローズアップします。幼い娘の「睫毛」は、あどけなさ・かわいらしさの象徴です。そして、若い妻のそれは、大人の女性の色気を滲ませます。上手いもんですよね~。草田男の「愛」あふれる一句です。

 

 草田男の娘さんも奥さんも、きっと濃く長い「上睫毛」の持ち主だったんでしょうね。クルンとカールした。ご紹介した句は、実にかーるい詠みぶりのようでいて、熟達の技光る句にまつげーねぇと、賛同して頂ければ幸いです。