ここ青森は本格的に寒くなって参りました。そんな昨日の朝の事です。
同僚Eさんと玄関で一緒になりました。私より少し年下の女性です。内履きに履き替えようとしていたEさんが、「あ、よろめいてしまいました」と、恥ずかしそうに言いました。普通です。大丈夫です、足元のよろめきぐらい。
その時、彼女と交わした短い会話です。
私 「そういえば、昔、『よろめきドラマ』ってありましたよね」
Eさん「ありました、ありました。懐かしいですね」
私 「死語、なんですかね?」
お若い読者もいるかもしれないので、ちょっと説明しますね。『昼ドラ』は分かりますよね。お昼の時間帯に放送される、主婦向けのテレビドラマのことです。その昼ドラのうちでも、ドラマチックな恋愛ものは『昼メロ』と呼ばれます。昼のメロドラマの略ですね。そして、昭和3、40年代、昼メロのうちでも、「不倫」をテーマにしたものは、『よろめきドラマ』と呼ばれたのです。その嚆矢でもあり、また、そう呼ばれるきっかけともなった作品が、昭和32年に発表された三島由紀夫の小説『美徳のよろめき』です。映画化・ドラマ化もされました。
『美徳のよろめき』って、なかなかインパクトのあるタイトルですよね。「不倫」という言葉には、悪いと分かっていながらという、理性が介在する余地がありますが、「よろめく」にはその余地がないですものね。よろめこうと思ってよろめくのではないのですから。意志とは無関係によろめくのです、下足箱の前のEさんのように。
って、ほんとかいな。『美徳のよろめき』は未読なので、タイトルの印象だけで書きました。今度、ちゃんと読んでみたいと思います。
ところで。アメリカにも『昼ドラ』があるんです。こちらは英語では『ソープオペラ』と呼ばれます。『石けん歌劇』の意味です。やはり主婦層をターゲットとする放送時間帯であるためか、スポンサーが、石けん(洗剤)の会社であることが多く、そう呼ばれるのだそうです。
この、『ソープオペラ』をパロったタイトルと思われる小説がこちら。
そういえば、阿川さんの御結婚相手、お友達のご主人だったそうで。よろめいちゃったのね。