おばあさん見習いの日々(ダジャレ付き)

1961年生まれ。丑年。口癖は「もう!」

あんなに光が好きなのに、なぜ「蛾」は月を目指さないの?

夏の夜。魅入られたように、光に向かって螺旋を描いて飛ぶ、「蛾」。

f:id:takakotakakosun:20181002212028j:plain 速水御舟(はやみ ぎょしゅう)『炎舞』

 

  「走性」って、ご存知ですか。動物に生まれながらに備わった習性で、その強い力から、生き物は逃れることは出来ないのです。

 例えば。「蛾」は光に引き寄せられます。これを、「正の走光性がある」とか、「光に対する正の走性がある」と言います。なので、街灯はもちろん、御舟の絵のように、

「飛んで火に入る夏の虫」となるのです。

 

 では、夜空に煌々と光る月、なぜあの月を目指し遙かに飛び立つ「蛾」はいないのでしょうか。

 「蛾」は光に向かって飛ぶのですが、その際、ある一定の角度を保って飛ぶ、つまり「光を背にする」という習性があるのだそうです。

 光は光源から放射状に広がりますが、月の光はどうでしょうか。月や星は地球からあまりにも遠いため、真っ直ぐ平行に降り注ぐ光と考えることが出来るのです。これを「平行光線」といいます。真上からの光を背にするということは、地面と平行に飛ぶことになるのです。そのため、「月に向かって」飛んでいく「蛾」はいないのです。

 また、この地面と平行に飛ぶことが出来るという点が、「蛾」が正の走光性を獲得した理由ではないかとも考えられるのだそうです。

 

 街灯などの、放射状に広がる光に向かう「蛾」について、もう一度考えてみましょう。

 「蛾」は光源に一直線に向かうことはできません。放射状の光を常に背にするためには、螺旋を描くことになります。そして少しずつ上昇し、やがて「光源」に衝突するのです。

 

  もともとは生存に有利だった走光性が、人工の光の登場によって、そうこうしているうちに、裏目に出てしまったというわけなのです。

 

追記

 やった~、ブックオフ速水御舟の画集をゲット~!冒頭の『炎舞』、つまり「蛾」の絵も載った「画集」なの。大喜びの私なのです。