夏井いつき先生といえば、今をときめく俳句界一の売れっ子。「プレバト」みてますよ。先生の的確で論理的な解説、素晴らしいですね。
その夏井先生が、NHKEテレの「サイエンスゼロ」に二週続けて出演されました。今日は、その二週目の「チバニアン」の回について書きたいと思います。(一週目のスーパーカミオカンデの回もとっても面白く、内容も濃いものでした)
チバニアンとはラテン語で「千葉時代」。地球は巨大な磁石のようなもので「S極・N極」があるわけですが、77万年前までは今とは逆向きだったんだそうです。それが、77万年前から12万6千年前までという、長いようで、地球の歴史から見れば短いとも言える期間の間に、行きつ戻りつしながら、現在の「極」の向きに落ち着いたのだそうです。その、およそ64万年という「フラフラ期」を証明する地層が千葉県にあり、だったらその時代を千葉時代=チバニアンと名付けよう、という審査が現在行われていると、多分、こんなことだと思うんです。
8月26日放送の「サイエンスゼロ」では、俳人・夏井いつき氏と茨城大学理学部教授・岡田誠氏が視聴者から募った「チバニアン」を兼題とした俳句を鑑賞したわけです。
岡田氏は チバニアン海底に積む夏幾万 という句を推されました。
今、目にすることが出来る「チバニアン」を示す地層は、元々は海底で形成され隆起したものだそうです。そして、岡田氏がおっしゃるには、「私達のやっていることは、まさにこの地層にどれだけの夏、つまり年月が詰まっているのか、ということなんです。すごく、わかっている句だと思います」ということでした。夏井氏も「俳句としてもいいですよ」と評価しておられました。
僭越ながら、私がいいなと思った句も紹介させて下さい。
緑陰に腸(はらわた)晒(さら)すチバニアン
むき出しになった地層が、まるで地球の腸のようだ、という意味になるかと思います。この句は、対比が効いていますね。緑陰という爽やかな季語に対して「腸」という生々しさのある名詞。「腸」という柔らかい感触に対してチバニアンという「地層」の堅さ。テクニックとしての面白さがあります。そして、やはりなんと言っても、全体を流れる「詩」がありますね。
この「詩」があるという表現は夏井先生も「プレバト」でちょくちょくおっしゃいますが、これは論理で説明できない部分なんですよ。説明できないから、「句」を作る。
「サイエンスゼロ」の「575でカガク」という企画について書きました。一週目も二週目も、最初は「俳句なんかわからない」というスタンスだった科学者が、だんだん俳句を面白いと感じるようになって行く様子が、とっても面白かったのです。科学と俳句は案外相性がいいのかもしれません。そういえば、有名な科学者でかつ俳人っていう方もいらっしゃるし。
次回の「575でカガク」が楽しみです。指折り数えて待ちたいと思います。(俳句を作るときって、つい、指を折ってしまいますよね)
デボン紀(シルル紀と石炭紀の間。イギリスのデボン州にちなむ)の化石
地磁気の逆転もドラマチックだとは思うんですが、こういう化石が出る地層の方が、なんというか、景気がいいというか、ゴチソウ感があるというか・・・。